新NISAに債券は必要?|年金の運用の記録で確かめて、どこで持つかを決めました

新NISAで株の投資信託だけを積み立てていると、値動きが気になって「債券も混ぜたほうがいいのでは」と考えることがあります。その債券が実際どう動いたのかを、日本の年金の積立金の運用記録で確かめる回です。結論から言うと、決めるのは**混ぜるかどうかではなく、どこで持つか**でした。新NISAの中は株の投資信託にしておき、満期まで待って決まった金額を受け取りたいものは新NISAの外で持つ、という分け方になります。

まず記録のほうから。日本の年金の積立金はGPIFが運用していて、中身は国内債券・外国債券・国内株式・外国株式の4つに分かれています。2024年度は、外国株式がプラス6.62パーセント、外国債券がプラス1.70パーセント、国内株式がマイナス1.46パーセント。そして国内債券がマイナス4.47パーセントで、4つの中でいちばん大きく減っていたのは株ではなく国内債券のほうでした。金額では国内債券だけで2兆8426億円のマイナス、資産全体ではプラス0.71パーセントです。2022年度も見ると、国内株式プラス5.54パーセント・外国株式プラス1.84パーセントと株は両方プラスで、その年に国内債券はマイナス1.74パーセント(外国債券はマイナス0.12パーセント)。2年とも4つの中でいちばん下は国内債券でした。**これは年金の積立金の運用実績であって、視聴者の口座の成績ではありません。**収益率は時間加重収益率(運用手数料等控除前)で、GPIFは時価評価により資産の管理・運用を行っています。国内債券には為替ヘッジ付きの外国債券と円建ての短期資産が含まれます。過去の記録であり、将来の運用成果を保証するものではありません。

なぜ債券が減るのか。動かしているのは株価ではなく金利です。利子が年2パーセントの債券を1万円で買ったあと、金利が上がって年3パーセントの債券が新しく出れば、同じ1万円を出すなら300円もらえるほうが選ばれます。前の債券は値段を下げないと買い手がつきません。日本銀行の説明でも、価格が下落すると利回りは上昇する、とされています。下げ幅は満期までの長さで変わり、金融経済教育推進機構の教材には「債券の満期までの期間が長ければ長いほど、価格の下落幅は大きくなる」と書かれています。実際、財務省が公表している10年国債の利回りは、2022年度が年度はじめ0.226パーセント→年度末0.389パーセント、2024年度が0.765パーセント→1.497パーセント。どちらの年度も金利は上がっていました。

ただし、この記録のマイナスは**時価で数えた1年分の変化**です。GPIFの資料には「時価評価により資産の管理・運用を行っています」と書かれています。債券1本だけを見れば、貸した相手が約束を守り、満期まで持てるなら、決められた金額が返ってきます。問題は、その「満期まで持つ」が自分の口座でできるかどうかです。新NISAで積み立てるのは債券そのものではなく債券の投資信託で、この2つは返ってくる日が違います。債券そのものには満期があり、何年何月にいくら返ってくるかが決まっています。投資信託にはその日が決まっていないものが多く、決まっていても額面では戻りません(中の債券は満期のたびに別の債券へ入れ替えられていきます)。**満期まで持てば決まった金額が返ってくる、という性質だけが投資信託には付いていません。**

途中で必要になったときはどうか。財務省の個人向け国債「変動10年」の商品概要には、償還金額は「額面金額100円につき100円」、そのすぐ横に「中途換金時も同じ」と書かれています。中途換金で差し引かれるのは直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685だけで、値下がりした分は引かれません。ただし中途換金できるのは発行後1年経過してからです(市場で売買する国債はこの限りではなく、満期前に売ればそのときの値段になります)。

ではその個人向け国債を新NISAで買えばいいのか。買えません。国税庁の新NISAの概要では、国債・地方債などの特定公社債はつみたて投資枠も成長投資枠もどちらも対象外、公募公社債投資信託の受益権も両方とも対象外です。新NISAで債券に投資したい場合に選ぶのは株式投資信託の形のもので、さらに「信託契約期間を定めないこと又は20年以上の信託契約期間が定められていること」という条件が付きます。つまり新NISAの中では、額面で戻る形は選べません。

だから分け方はこうなります。新NISAの中は株の投資信託にしておく。満期まで待って決まった金額を受け取りたいお金は、新NISAの外に置く。理由は二つで、①新NISAの中に満期のある債券がないこと、②新NISAで税金がかからないのは増えた分だけなので、増え方の小さいものに非課税の枠を使うことになること(債券の投資信託を新NISAで買う場合の話です)。新NISAの外で持つなら個人向け国債という選択肢があり、変動10年は2026年8月5日時点で財務省が公表していた回の利率が税引前で年1.87パーセントでした。この利率は実勢金利に応じて半年ごとに変わるので、買うときに財務省のページでご確認ください。1万円から買えて、発行から1年たてば決まった金額で中途換金できます。たとえば4年後に払う頭金のように使う時期が決まっているお金は、この形が合います。

なお、2025年12月に閣議決定された令和8年度税制改正の大綱に、つみたて投資枠の対象商品を広げる項目が入りました。指定指数に連動しない公募株式投資信託の要件を「主に株式に投資するもの」から「主に株式又は公社債に投資するもの」に変える、という内容で、金融庁は債券中心あるいはバランス型の投資信託の選択肢の充実を図るものだと説明しています。ただしこれは大綱の段階で、金融庁の資料には「通常国会において関連法案が審議される予定です」と書かれており、施行の時期は書かれていません(年齢の条件を広げる話には2027年1月以降と時期が書いてあります)。増えるのも投資信託で、満期のある債券を新NISAで買えるようになるという話ではありません。

今日やることは三つ。①証券会社のアプリで積立の設定を開き、商品の名前に「債券」「バランス」が入っているか見る。②入っていたら、その商品の説明書(交付目論見書)の「信託期間」の欄を見る(無期限と書かれていれば満期はありません)。③使う時期が決まっているお金があるなら、その分だけ新NISAの外に置くかを決める。

投資には、投じた金額より価値が下がる元本割れの可能性があります。過去の記録は将来の運用成果を保証しません。制度も税率も金利も変わります。どう分けるかは、ご自身の家計と、そのお金をいつ使うかで決める自己責任の判断です。実行する前に、下記の一次情報でご自身でも確かめてください。

※この動画はAIによる音声・イラストを含みます。

▼目次
0:00 導入(この動画でわかること)
0:16 1|「リスクが低い」と言われるのは、何を指しているのか
1:08 2|年金の運用の記録で、いちばん減っていたのは国内債券だった
2:44 3|株が両方プラスの年に、減っていたのは債券のほうだった
4:44 4|債券の値段は、何で動くのか
6:48 5|年金の記録のマイナスは、時価で数えた1年分の変化
7:44 6|あなたの場合、その「満期まで持つ」ができるか
8:45 7|個人向け国債は、国が決まった金額で買い戻す
9:43 8|新NISAでは、その個人向け国債を買えない
11:25 9|混ぜるなら、満期のあるものを新NISAの外で
13:04 10|これから、つみたて投資枠に債券中心の商品が入るかもしれない
14:12 11|今日やること

▼出典(2026-08-07 確認)
・GPIF 2024年度業務概況書(資産別の収益率・収益額) https://www.gpif.go.jp/operation/32821257gpif/2024_4Q_0704_jp.pdf
・GPIF 2022年度業務概況書 https://www.gpif.go.jp/operation/79328564gpif/2022_4Q_0707_jp.pdf
・財務省 個人向け国債「変動10年」商品概要 https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/outline/hendou/
・財務省 現在募集中の個人向け国債・新窓販国債 https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/recruitment/
・財務省 国債金利情報(10年国債の利回り) https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/data/jgbcm_all.csv
・国税庁 令和6年1月1日から開始する新NISAの概要 https://www.nta.go.jp/users/gensen/nisa/pdf/shinnisa.pdf
・金融庁 NISAを利用する皆さまへ(令和6年6月・令和7年9月改訂) https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/slide_202406.pdf
・金融庁 令和8(2026)年度税制改正について(2025年12月) https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20251226-2/01.pdf
・金融庁 アクセスFSA 2026年2月号(令和8年度税制改正) https://www.fsa.go.jp/access/r7/270/270_03.pdf
・日本銀行 教えて!にちぎん「国債の金利はどのように決まるのですか?」 https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/glossary/market/m11.htm
・金融経済教育推進機構(J-FLEC)債券の価格と金利 https://www.j-flec.go.jp/links/kinyu-navi/learning/kouza3/kouza3-4/index11.html